
一般に言われる社是、社訓、行動指針、企業理念などの言葉を、ここでは「経営理念」と総称してお話します。
皆さんの会社の中に「経営理念」を掲げていますか。
経営理念という言葉は聞くがあまり注意することはなかった、と言われる人が意外と多いのには驚いています。
掲げても目立った効果が出るわけでもなく、しかし掲げておかないと格好がつかない、と言われる経営者の方もおられます。
特に中小企業では、なぜ経営理念に注目しないのでしょう。
考えますには、この一番の理由は、経営理念の持つ威力を理解されている人が少ないことによるものと思います。この威力を知りますと、必ず経営理念を創りたくなるはずです。
今回はこの経営理念の威力についてお話をして、併せて現在の経営理念を見直すなり、無いところにはこの機会に是非とも創って職場に大きく掲げていただきたいと願います。そして経営理念の威力は、社員からの強い支持に比例して発揮されていくのです。
先ず、経営理念には「3つの特性」が内在しています。この特性が威力を生み出すのです。
3つの特性を明確に表現している経営理念は、(後述しますが)社員の考え方や行動の方向付けに大きな力となります。
3つの特性を挙げますと次の通りです。
1.
当社が生きていく方向と当社の活動領域(事業領域)を明確にする=「方向の明確性」と言います。
2.
当社がこの世に存在することを社会から認められるために、当社が社会に対して果たすべき使命(役割)を明確にする=「使命の明確性」と言います。
3.
企業成果を出すための行動や判断をする際の、根本的な拠りどころとなる判断基準を明確にする=「判断基準の明確性」と言います。
経営理念を創るときに、この3つの特性を明確に織り込んでいくことを「経営理念3つの明確」と言います。
企業再生のコンサルティングに入った当初に、先ずその企業の中に経営理念が有るかどうか、経営者の言葉で表現されているかどうか、そして「3つの明確」が明らかに表現されているかどうか、に注目します。
経営者自身の言葉で、3つの特性を明確に表現された経営理念は、今後の経営改善を進めるための行動の基軸に置くことができ、企業を再生させる上で大きな力となります。
今から7、8年前、中堅企業の社長さんが、何回も書き直しながら、1年がかりで経営理念を創られました。途中で2回ばかり私に意見を求められましたが、出来上がりは誠に立派なものでした。
社員全員の前で、社長さん自身がこの経営理念について説明され、当社の今後の方向と役割・使命について切実に訴えられたのです。同時に毎朝の朝礼時に全員で唱和する習慣が出来上がっていきました。また社内の見やすい個所に経営理念を大きく書いて貼ることとしたのです。
そうしているうちに社員の中には、この掲げてある額(経営理念)を見上げながら、小さな声で読み直している姿を時々見る機会が増えて行ったのです。
この結果社員研修や職場の中でも、この経営理念から引用した話や文書ができるようになって来ました。後に経営理念の心が社員に浸透し1年後にはこの企業は立派に再生しました。
この例は、最初のうちは経営理念を意識的に日頃の活動の中に組み込ませるための努力が必要でしたが、やがて社員の中に自然に溶け込んでいき、考え方や行動が一定の方向に向かっていくようになったのです。このようになれば生産性が上がり、再生速度が加速されたのです。
経営理念に内在する「3つの特性」を明確に表し、これが社員の支持を得た時の効果がいかに大きな威力となるか、の実際の話です。
一般的に経営理念を、これほど大きな力があるものと理解されていることは少ないように思います。平穏無事であるときは、経営理念には気もつかないのが自然でしょう。
しかし、企業が窮地に至り再生していこうとしたときには、この企業をどの方向にリードしていくのがよいのか、どこの事業領域で勝負していくのか、社員全員の基本的な考え方や行動はどうあるべきか、について必ず答え(あるべき姿)を持っていなければ、到底企業を再生させることはできません。答えのないままに進めた経営改善の過程は、糸の切れた凧のように風に漂っているだけです。どこに行くのか分からないままになります。
企業は、いついかなる事態が起るかも知れません。事態が起きた時、すみやかに自分を見つめなおす鏡を持っていなければならない、と思います。
この鏡こそが経営理念であり、経営理念の中に事態脱出・事態改善の答えがあるのです。
経営とは「経営理念の追求である」ともいわれる所以はここにあります。
経営理念の重要さについてご理解いただけましたでしょうか。
御社の経営理念の中に「3つの明確」が満たされていますか。
御社の経営理念は、社員から強い支持を受けていますか。
御社の発展のために、よくお考えください。
(2009.12.11)